好色一代男世之介双六

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井原西鶴著『好色一代男』の主人公世之介の人生を描いた古典文学を双六にしました。好色という言葉のイメージが強い古典文学です。実際に読んだ人は少ないのではないでしょうか。世之介は江戸商人版光源氏、『伊勢物語』の在原業平など源氏54帖からもわかるようにパロディ的要素がふんだんに含まれています。色事だけではなく、ほろ苦い人生教訓も入り、古典の素養も入り、挿絵入りニューウェイブ・ノベル「浮世草子」という文学スタイルを開拓したのです。
日本文学全集の読書会で古典の不人気に苦悩し、双六を思いついた当会最初の記念すべき双六作品です。
芝居の緞帳、赤と緑の楽しい雰囲気が物語のユーモラスな一面を表現しており、すぐに遊んでみたくなる楽しい色合い。一通り遊んだ後は読んでみたくなる不思議。

 

世之介は江戸の光源氏

少女漫画になりにくい世之介

光源氏は少女漫画の定番、『伊勢物語』の在原業平もよく見かけます。ところが世之介は男性漫画のお色気系では見ることはありますが、少女漫画では皆無です。
「色好み」とは恋多きですが、「好色(コーショク)」となると色事に大きくインパクトが傾き、エロエロ的なイメージが浮かんでしまいます。俳諧師としての西鶴のセンスがさく裂しているとも言えます。
西鶴は妻に先立たれ出家して書き始めました。意外だと思われる方も多いかもしれませんね。西鶴の文学的挑戦であったのです。
とはいえ、7歳から色気づくって早すぎる? いえいえ現代だって「クレヨンしんちゃん」があるじゃありませんか。
古典を知らないと気づかない部分もあり、男性優位かと思えば、世之介はいつだって情けない男。花魁のハンサムウーマンぶりにため息が出て、女性賛美の一面もあると読んでみると気づきます。


日本霊異記今昔物語・読書会小さな靴あと特製曼荼羅双六

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河出書房新社の『日本文学全集8』より、『日本霊異記』と『今昔物語』を合体した双六です。読書会の理解のために作成されました。ともに仏教説話集という共通点があり、曼荼羅的なデザインとなりました。

 

仏教の説話集は生々しい?

平安時代の庶民の生活や考えを知る手がかりになる物語

『日本霊異記』は『』日本国現報善悪霊異記』、『今昔物語』は『今昔物語集』が正式です。『日本霊異記』は平安時代初期(9世紀前半)『今昔物語』は平安時代の末期に書かれたものです。300年ほどの開きがあります。

『日本霊異記』はまだ仏教が一般に信仰されていない時代で、秩序だった考えが生まれていませんでした。仏法説話というと説教臭いお話と想像してしまいがちですが、善い行いをすれば必ず良いことが、悪い行いは報いを受けるという「因果応報」に基づいて、具体例を描いているのです。それにちょっとびっくり、動物の恩返しや怪力の女性など、実に生々しく不思議なお話のオンパレードです。
薬師寺の層、景戒という僧侶が書いたとされています。

『今昔物語』は「今は昔……」という冒頭から始まる説話集です。膨大な説話集で31巻、未完の物語集です。物語は千以上と言われ、欠損している部分も多く誰が何のために編纂したのか分からない謎の多い古典文学です。しかし、皆さんよく知っている物語もたくさんあるのです。芥川龍之介が『今昔物語』から短編小説を描き、現代に蘇らせました。『鼻』や『羅生門』などは有名です。
羅生門は実存していました。羅生門の門上の祀られていた仏像は今、東寺に現存しており、拝観できるのです。黒澤映画としても有名な『羅生門』の風景がリアルな実態を持って浮かび上がってきます。
お釈迦様の一生の物語、現代にも通ずる女盗賊の話など、読んでみると発見だらけでした。その二作品を双六にしてみました。


阪急阪神文学御洒落双六

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兵庫県阪神間を走る2つの私鉄、阪急電鉄と阪神電鉄、路線図のように張り巡らされた実際の駅、もちろん路線図のままです。駅の表示板も同じように描いています。
ハイカラモダンと言われた時代、時代に先駆けたファッショナブルな女性たちが双六で、阪神間の文学名所や文学碑、文学をご案内します。

 

スタートは飛び双六の手法で

六甲山を背に海へ向って広がる阪神間は物語の宝庫

スタートは中央、阪急西宮北口駅となっています。まず、サイコロを振って出た数で指示に従ってその場所からスタート。飛ぶ場所は西宮港、六甲駅など。どこだろうと探さなくてはいけません。止まった絵マスに書かれている指示に飛ぶのが飛び双六です。その割合が多いのがこの双六の特徴です。
ゴールはもちろん宝塚大劇場です。
甲子園は戦前、高級リゾート地だったんです。今は甲子園球場で有名ですが、高級リゾートホテル「甲子園ホテル」は国内外に知れ渡っていました。今は武庫川女子大の校舎になっています。申し込めば見学ができます。競馬場も近くにあり、殿方は競馬へ、婦女子はいちご狩りに出かけたそうです。甲子園はいちごが名産でした。
「小林」は「おばやし」と読みます。聖心女学院の生徒が乗降する駅です。今でも熱心なファンの多い須賀敦子が通った女学校でした。
そして今も倍率が高い宝塚音楽学校。生徒である宝ジェンヌは電車で座った姿を見たことがないとか。手塚治虫記念館もあり、様々な文学の素材となった土地柄を楽しく回ることができます。


宮沢賢治双六

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スタイリッシュな宮沢賢治のシルエットに書かれているのは作品。彼の人生、時代と作品はリンクしています。仏教の説話に使われる物語も多く、童話作家と思われがちな宮沢賢治の奥深い物語を彼の人生と共に追いかけてみる双六です。

 

宮沢賢治 ひとつの青い照明

生前刊行された童話集は一冊。死後、作品が世に出て最も有名な詩人、作家のひとりとなった

『雨ニモマケズ』の詩を知らない人はいないでしょう。この詩は賢治が持ち歩いていたトランクの中の黒革の手帳に記されていました。終わりは「ソウイウヒトニワタシハナリタイ」ではなく南無妙法蓮華経、経が数行並んでいたのです。
 戦前、戦中、戦後、人々に我慢を強いる合言葉のように利用されていたふしがあります。宮沢賢治は何かを成し遂げた人なのかというと、社会的には何もなく親が彼のしでかした事を尻拭いしていた事実。心優しき聖人のような童話作家というイメージが私にはありました。でも、彼の生涯を追えば、正反対のことばかり出てくるのです。感受性が強い金持ちのお坊ちゃんの道楽的人生を歩んだ人、というのは言い過ぎかもしれませんが、そんな印象を持ちました。
初期の童話『竜のはなし』はお釈迦様が飢えた虎の親子に我が身を投げ出し救った話と似ていますし、『よだかの星』『なめとこ山の熊』など哀しき命への想いは胸に突き刺さります。命を食べたくないよだかの叫びは賢治そのもので、21歳で菜食主義を宣言し、生涯貫き通します。
第二次世界大戦の空襲で賢治の遺品のほとんどは焼けてしまいましたが、防空壕に持ち込んだ原稿は残りました。
教科書に載った宮沢賢治の詩や物語、大人になって読むと違う世界が立ち現れてきます。彼の辿った人生を追いかけながら物語を紐解いてみる試みの双六です。


かな双六

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いろはにほへと順で歌舞伎の演目と役者、家紋などで構成されたあでやかな双六です。

 

江戸時代の歌舞伎芝居を表現

絵双六は江戸時代、浮世絵と印刷技術によって大発展を遂げました。この時代にすべての絵双六が出尽くしたと言えるほどです。絵師たちが技量を競って仕上げた双六は今見ても斬新です。かな双六は当時の絵双六をお手本に作成を試みました。

「ろ」は『義経千本桜』に登場する狐、源九郎狐です。狐のしぐさで花道を引っ込む「狐六方」と言います。「六方」とは歩く芸のことなのです。「と」はドロンのと、
今でも「ドロンする」と言うことがありますね。ドロンは姿を消すこと、これはご存じ大泥棒、鼠小僧です。「い」は市松、女形で有名な「市松」四角の連続模様、市松模様の語源ともなった役者です。
家紋や、歌舞伎役者などを描いています。浮世絵を参考にして作成しています。
かな双六の説明は双六の歴史で、説明のYouTubeをご覧いただけます。


西宮のむかし話双六

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関西学院大学文学部森田雅也教授『西宮のむかし話』を双六にしています。兵庫県西宮市にもたくさんの昔話が残っています。郷土の歴史を学ぶきっかけになるような地域文化の双六です。

 

意外と知らない郷土の昔話

昔話にはその土地の庶民の歴史が含まれています。自分の郷土を知ることによって愛着も生まれます。地域文化を伝える双六としてイベントでも大活躍している双六です。

関西学院大学文学部森田雅也教授と教え子の皆さんで編集された本『西宮のむかし話』、許可を得て双六にさせていただきました。
昔話って長年住んでいても知らないことが多いと再確認。貴重な水、その痛ましい話や、お酒造りに最適な水「宮水」の発見、お地蔵様が火事から子どもを救った話など、盛りだくさんで、遊びながら学べる地域文化の双六です。


人形浄瑠璃双六

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近畿大阪は人形浄瑠璃が盛んな地です。兵庫県も深い歴史があります。歌舞伎の前は人形浄瑠璃が娯楽の花形でした。繁栄の名残りのように各地には農村舞台が今も残っています。浄瑠璃の演目と共に農村舞台も紹介した地域文化双六です。

 

人形浄瑠璃双六には解説本があります。

大学の講義用に作成された関係もあり、伝統文化を学ぶ目的で解説本を付けています。ユネスコの無形文化遺産です。歌舞伎や狂言の中心が東京に移動してしまいましたが、文学は上方中心です。

人形浄瑠璃の三大演目は『義経千本桜』『仮名手本忠臣蔵』『菅原伝授手習鑑』。実は歌舞伎と同じなのです。江戸時代、人形浄瑠璃で大人気となった三作、歌舞伎でも演じてみようということになり、ともに三大名作となったのです。
解説本の一部を載せておりますのでご覧ください。画面クリックで拡大します。


西宮神社の旅双六

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商売の神様はえびす様、その総本山が兵庫県西宮市の西宮神社です。1月10日に行われる十日えびすには神事「福男」選びが行われます。開門と共に境内を駆け抜けて本殿に一番先に到着した人がその年の「福男」、有名な神事です。
人形遣いの祖である百太夫神も祀られています。えびす人形を操り全国を回りえびす信仰を広め、また人形浄瑠璃に発展していったとも言われています。
えっびすさんで親しまれている西宮神社の境内をめぐる双六の詳細は別サイトにございます。双六の下にあるバーナーをクリックしてください。


日本地ビールの旅双六

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2016年度に実験的に作成した双六です。2016年度に現存する各地の瓶ビールの絵で日本を巡る双六にしています。2021年度では変化があると思われます。ビールの横にあるQRコードで各ブルワーリーに飛ぶことができます。